遺族年金とは。遺族年金を考える。

生命保険における死亡保障というのは、独り身であれば葬儀費用分程度を確保できればよいのかもしれませんが、主に遺族の生活を考えお金を残し生活を支えるためのものです。民間の生命保険は商品によって様々ですが、公的年金においても死亡保障がありますので、その理解を深めて民間の保険も改めて考えてみるのが良いと思いますので、遺族年金について考えてみようと思います。

遺族年金とは

遺族年金とは、国民年金および厚生年金に加入中の方が、その方によって生計を維持していた遺族に対し支給される年金制度です。

国民年金加入者の場合、「遺族基礎年金」と言い、厚生年金加入者の場合、「遺族厚生年金」と言います。

遺族基礎年金
  • 受給対象者
    18歳到達年度の末日までの間にある子供(障害者は20歳未満)のいる配偶者、または子供
  • 収入・取得による制限
    受給対象者が前年度850万円未満の収入、655万5000円未満の取得であること
  • その他受給条件
    亡くなった日のある月の前々月まで公的年金加入期間の2/3以上について保険料が納付または免除されていること。
    亡くなった日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと。
  • 年金額
    780,100円+子供の加算額
    子供の加算額:第1子、第2子は各224,500円、第3子以降は各74,800円
    ※子供が遺族基礎年金を受給する場合の加算は第2子以降について行い、子供1人あたりの年金額は、年金額を子供の数で除した(割った)額になります。
  • 受給期間
    子供が18歳に達した場合(障害者は20歳)、受給対象者が婚姻した場合(事実婚含む)、遺族基礎年金を受け取る権利を失ってから5年経過した場合など
遺族厚生年金
  • 受給対象者
    以下の所定の順でいちばん上位のものが対象
    1. 子供のいる妻、または55歳以上の夫、または子供(障害者は20歳未満)
    2. 子供のいない妻
    3. 子供のいない55歳以上の夫
    4. 55歳以上の父母
    5. 18歳未満の孫(障害者は20歳未満)
    6. 55歳以上の祖父母
  • 収入・取得による制限
    受給対象者が前年度850万円未満の収入、655万5000円未満の取得であること
  • その他受給条件
    遺族基礎年金同様、保険料の納付条件を満たしていること。
    子供のいる妻、または55歳以上の夫、または子供は遺族基礎年金も併せて受給できる。
    30歳未満の子供のいない妻は5年間の有期給付となる。
    40歳から65歳未満で子供のいない妻は中高齢の加算額が受けられる。
    55歳以上の夫、父母、祖父母の場合、受給開始は60歳から。
  • 年金額
    亡くなった人が受け取る予定だった年金額の約3/4
    ※40歳から65歳未満で子供のいない妻は、中高齢の寡婦加算額として585,100円が加算される。
  • 受給期間
    妻の場合:子供がいる場合、原則終身。ただし30歳に到達する前に遺族基礎年金を受け取る権利を失ってから5年経過した場合、権利が消滅。
    30歳未満で子供がいない場合でかつ受給権利を得た場合、5年経過後に権利が消滅。
    子供、孫の場合:18歳に達した場合(障害者は20歳)
    夫、父母、祖父母の場合:60~65歳の間(ただし夫の場合で遺族基礎年金の受給中に限り、60歳より前でも受け取ることが可能)

といった感じで、なかなか複雑です。「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」では”配偶者”、”妻”、”夫”といった具合に言葉を使い分けているので注意が必要です。また「子供の有無」だったり、「年金を受け取る方の収入(取得)」や、「30歳」「18歳」「55歳以上」といった具合にキーとなる年齢も覚えておくと良いでしょう。

上記以外に、国民年金の独自給付として「寡婦年金」「死亡一時金」というものがあります。(厚生年金にはありません)

寡婦年金

寡婦(かふ)年金とは夫との婚姻関係を10年以上継続していた妻に対し60歳~65歳まで受け取ることができる年金です。

  • 受給対象者
  • 条件
    亡くなった人の国民年金の保険料納付期間(免除期間含む)が合計25年以上あること
    亡くなった夫との婚姻関係を10年以上継続していた65歳未満の妻であること
  • 年金額
    亡くなった夫が受け取る予定だった年金額の約3/4
  • 受給期間
    妻が60歳~65歳未満の間

夫が既に年金を受給していた場合や、妻が繰上げて年金を受給していた場合は請求できません。
また、他の年金と重ねての受給はなく選択することになります。
後述する死亡一時金も受け取ることができる場合、寡婦年金か死亡一時金かを選択することになります。

死亡一時金

死亡一時金とは亡くなった人の保険料納付期間(免除期間含む)が3年(36ヶ月)以上ある場合、遺族が受け取れる一時金です。

  • 受け取れる遺族
    以下の所定の順でいちばん上位のものが対象
    1. 配偶者
    2. 子供
    3. 父母
    4. 孫
    5. 祖父母
  • 条件と死亡一時金の額
    亡くなった人の保険料納付期間により受け取れる死亡一時金が異なります。
    ・  36ヶ月以上180ヶ月未満:120,000円
    ・180ヶ月以上240ヶ月未満:145,000円
    ・240ヶ月以上300ヶ月未満:170,000円
    ・300ヶ月以上360ヶ月未満:220,000円
    ・360ヶ月以上420ヶ月未満:270,000円
    ・420ヶ月以上:320,000円

亡くなった人が既に年金を受給していた場合や遺族基礎年金を受給している人がいる場合、死亡一時金は受け取ることができません。